抜歯の判断基準はどう決まる?残せる歯と抜く歯を分ける歯科医の視点

抜歯の判断基準はどう決まる?残せる歯と抜く歯を分ける歯科医の視点

他院で「この歯は抜きましょう」と言われ、本当に抜くしかないのかと立ち止まっている方は少なくありません。抜歯は一度行えば元には戻せないため、どんな基準でその判断が下されたのかを知りたくなるのは当然のことでしょう。

歯科医師が抜歯を判断するとき、頭の中では「この歯を治せるか」という問いだけでなく、「この歯がこの先どれくらい機能し続けられるか」という見通しを立てています。そこには、原因ごとの見極め方や、1本の歯だけでなく口全体を見渡す視点が深く関わってきます。

抜歯の判断がどのような基準で決まるのか、そして残せる歯と抜くべき歯がどこで分かれるのかを、歯科医療の現場の考え方に沿って整理していきましょう。

この記事の監修者

鈴木 喜之

鈴木 喜之(すずき よしゆき)

医療法人社団 鈴木歯科クリニック 理事長・院長

昭和大学歯学部を卒業後、同大学第2歯科補綴学教室(全部床義歯学)に入局。その後、平成8年に山形市にて鈴木歯科クリニックを開院。

「山形という地方でも良質な歯科医療を提供したい」という想いのもと、その場しのぎの治療ではなく「長く健康でいられるための治療」を理念として診療を行う。予防管理をはじめ、マイクロスコープを用いた精密治療やインプラントなど、口腔内全体の健康を長期的にサポートする包括的な歯科診療を提供している。

「抜歯の判断基準」に絶対的な1本の線はない

多くの方が、ある数値や状態を超えたら自動的に抜歯になる、という明確な線引きを思い浮かべるかもしれません。けれども実際には、すべての歯に当てはまる絶対的な基準は存在しないのです。同じくらい傷んだ歯でも、その人の年齢や噛み合わせ、ほかの歯の状態によって最適な答えは変わってきます。

歯科医師が重視しているのは、「今この歯を治療できるかどうか」よりも、「治療したあと、その歯がどれだけの期間きちんと働いてくれるか」という見通しです。専門的にはこれを予後(よご)と呼びます。たとえ今は被せ物で形を整えられても、数年で再発して結局抜くことになるのなら、その治療がその歯にとって本当に良い選択だったとは言いにくいでしょう。

「治るか」より「この先どれだけもつか」で見る

 

 

予後という考え方は、抜歯の判断を理解するうえで欠かせません。歯を一軒の家にたとえると、見た目の壁をきれいに塗り直せても、土台である基礎が崩れていれば長くは住めません。歯科医師は被せ物という上物だけでなく、歯の根や、それを支える骨という基礎の部分まで見て、あと何年もちそうかを推し量っています。

この見方に立つと、「とにかく残す」ことが必ずしも患者さんの利益にならない場面が見えてきます。無理に残した1本が原因で治療が長引き、痛みや費用がかさみ続けるくらいなら、見通しを正直に伝えたうえで抜歯を提案するほうが誠実な場合もあるのです。抜歯の判断基準とは、こうした予後の見立ての積み重ねだといえます。

抜歯が検討される主な原因と、それぞれの見極め方

 

 

抜歯に至る原因は、大きく虫歯、歯周病、歯の破折の3つに分けられます。公益財団法人8020推進財団の第2回永久歯の抜歯原因調査(2018年)によると、抜歯の主な原因は歯周病が37.1%で最も多く、次いで虫歯が29.2%、破折が17.8%と報告されました。原因によって見極めのポイントが変わるため、順に見ていきましょう。

重度の虫歯は「被せ物を支える歯が残っているか」で決まる

虫歯が原因の場合、判断の分かれ目になるのは、虫歯がどこまで進んでいるかと、健康な歯の部分がどれだけ残っているかです。虫歯が歯の根の先まで達し、根の周りの骨まで溶けてしまっているような状態では、土台そのものが失われているため、保存は難しくなります。

ここで歯科医師が確認しているのが、歯ぐきの上に健康な歯質がぐるりと帯のように残っているかという点です。被せ物は、この帯の部分を抱え込むようにして固定されます。帯が一周残っていれば長持ちしやすく、ほとんど崩れて根だけになった状態(残根)では、被せ物を作ってもすぐに外れたり、内部で再び虫歯が広がったりしやすいのです。同じ「重度の虫歯」でも、この帯がどれだけ残っているかで見通しは大きく変わってきます。

歯周病は「歯を支える骨がどれだけ残っているか」で見る

歯周病による抜歯では、歯を支えている骨がどれだけ失われたかが大きな判断材料になります。骨が大きく溶けて歯がぐらつき、噛むたびに痛む、あるいは膿が何度も腫れて引かないといった状態では、保存が難しいと判断されることもあるでしょう。

注意したいのは、歯周病の進み具合は見た目だけでは分かりにくいという点です。歯ぐきの中に隠れた骨の状態は、レントゲンや、立体的に確認できるCTで初めて正確につかめます。鈴木歯科クリニックでもCTを備えており、骨がどの方向にどれだけ残っているかを立体的に確かめたうえで、残せる道が本当にないかを慎重に見極めております。骨の失われ方の形によっては、抜歯を避けられる場合もあるためです。

歯の破折は「割れ方の向き」で見通しが変わる

歯が割れている場合は、その割れ方の向きが判断を大きく左右します。歯の根が縦方向に割れる垂直歯根破折は、割れ目から細菌が入り込み、接着剤で固定してもまた割れやすいため、予後が厳しいケースの代表だといえるでしょう。一方、横向きや斜めの破折では、割れた位置によっては被せ物で対応できることもあります。

近年は、虫歯や歯周病による抜歯が減る一方で、破折を原因とする抜歯が増えてきました。とりわけ神経を抜いた歯は、水分を失った枯れ木のようにもろくなり、割れやすくなるといわれています。先ほどの調査でも、神経のない歯は破折の割合が大きいと報告されました。一度神経を取った歯ほど、その後の力のかかり方に気を配る必要があるといえるでしょう。

同じ歯でも歯科医によって判断が分かれるのはなぜか

 

 

「ある医院では抜歯と言われたのに、別の医院では残せると言われた」という経験をした方もいるのではないでしょうか。同じ歯を見ても判断が割れるのには、いくつかの理由があります。

1つは、医院ごとに設備や得意とする治療領域が違うからです。たとえば、マイクロスコープを使って細い根の中を精密に処置できる医院であれば、ほかでは難しいとされた根の治療をやり直して残せることがあります。歯周病やCTによる診断に力を入れている医院かどうかでも、残せる範囲は変わってくるでしょう。

もう1つは、歯科医師が拠って立つ治療の考え方の違いです。可能な限り歯を残すことを最優先する立場もあれば、予後を冷静に見積もって早めに次の手を打つ立場もあります。どちらが一方的に正しいというより、患者さんの価値観とどう噛み合うかが大切でしょう。だからこそ、判断にどうしても納得できないときは、別の歯科医師の意見を聞くことが選択肢を広げる助けになります。

「残す」ことが必ずしも正解とは限らないという視点

ここまで読むと、できるだけ歯を残してくれる歯科医師が良い医師だ、と感じるかもしれません。けれども、歯を残すこと自体が目的になってしまうと、かえって口全体の健康を損なう場合があるのです。

たとえば、割れて細菌の温床になった1本を無理に残すと、周りの骨が溶け続け、隣の健康な歯にまで影響が広がることがあります。ぐらつく歯をかばって片側ばかりで噛むうちに、噛み合わせ全体のバランスが少しずつ崩れていくことも珍しくありません。治療の本来の目的は、歯の本数を1本でも多く残すことそのものではなく、これから先も気持ちよく噛める状態を保つことにあります。

歯科医療の現場では、残せる歯は最大限に残しつつ、口全体の10年後、20年後を見据えて、抜くべき歯は適切なタイミングで抜くという、2つの視点のバランスが求められます。1本の歯にこだわるあまり全体を崩してしまわないよう、見えている歯だけでなくお口全体の将来像から方針を考えることが望まれるでしょう。

抜歯と言われて迷ったときにできること

 

 

抜歯を提案されて迷いがあるときは、その場で結論を出さず、いくつかの点を確かめてみるとよいでしょう。なぜ抜歯が必要なのか、残す選択肢は本当にないのか、抜いた場合はそのあとをどう補うのか、この3つを質問するだけでも、判断の背景がぐっと見えやすくなります。

それでも気持ちが晴れない場合は、別の歯科医院でセカンドオピニオンを受けるのも有効な手段です。とくに、レントゲンやCTの画像をもとに説明を受けられると、自分の歯がどういう状態なのかを目で見て理解しやすくなります。抜いた後の入れ歯やブリッジ、インプラントといった補い方まで含めて相談できる医院であれば、抜歯後の暮らしまで見通したうえで方針を選べるでしょう。

なお、抜歯を回避できる可能性のある具体的な治療法については、当院の別の記事「抜歯を回避する方法は?残せる歯の見極めと抜いた後の備えまで」でも詳しく解説しております。あわせて参考にしていただけたら幸いです。

抜歯を迷ったときは鈴木歯科クリニックへ

抜歯すべきかどうかは、見えている1本の歯だけでなく、お口全体の状態とこれからを踏まえて総合的に考える必要があります。他院で抜歯と言われて迷っている方は、別の歯科医師の意見を聞くことで、納得して治療方針を選べるようになるでしょう。

鈴木歯科クリニックは、山形市南栄町で開業から30年にわたり、地域の患者さまのお口の健康に向き合ってまいりました。院長は歯を失った後の補綴(入れ歯やブリッジなど)を専門的に学んできた経験をもち、抜歯が避けられない場合にも、その後の噛む機能をどう取り戻すかまで含めてご相談いただけます。残せる可能性も、抜いた場合の備えも、両面から一緒に考えていける体制を整えております。

「抜歯と言われたが納得できない」「抜いたあとのことが不安」という方は、まずはお気軽にご相談ください。CTを用いた診断にも対応しており、駐車場も20台分ご用意しております。ご相談・ご予約は、お電話にて承っております。

鈴木歯科クリニックが大切にしているのは、できる限り患者さまご自身の天然歯を残すという方針です。抜歯すべきか迷っている段階でも、早めにご相談いただくほど、残せる可能性や選べる治療の幅は広がっていきます。気になる段階で、一度お口の状態を一緒に確認してみませんか。

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虫歯治療・歯周病治療・矯正歯科・小児矯正歯科・審美歯科・予防歯科・インプラント・入れ歯などの治療に対応しております。 マイクロスコープ、歯科用CTレントゲンを完備しておりますので、より精密な治療が可能です。

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