歯を残す治療はどこまでできる?神経を守る段階から見極め方まで
「この歯は抜くしかありません」と告げられても、できることなら自分の歯を残したいと願うのは自然な気持ちでしょう。実は、歯を残すための治療は1つではなく、歯がどこまで傷んでいるかによって打てる手立てが大きく変わってきます。
ひと昔前なら抜くと判断されていた歯でも、診断と治療技術の進歩で残せる場面は確かに増えてきました。厚生労働省の令和4年歯科疾患実態調査によると、80歳で20本以上の歯を保つ人(8020達成者)の割合は51.6%に達したと報告されています。自分の歯を長く保てる時代になりつつあるからこそ、どんな選択肢があるのかを知っておく価値は大きいといえます。
歯の傷み方の段階に沿って、神経を守る治療から残せないと言われた歯への手立てまでを、順に整理していきましょう。
この記事の監修者

鈴木 喜之(すずき よしゆき)
医療法人社団 鈴木歯科クリニック 理事長・院長
昭和大学歯学部を卒業後、同大学第2歯科補綴学教室(全部床義歯学)に入局。その後、平成8年に山形市にて鈴木歯科クリニックを開院。
「山形という地方でも良質な歯科医療を提供したい」という想いのもと、その場しのぎの治療ではなく「長く健康でいられるための治療」を理念として診療を行う。予防管理をはじめ、マイクロスコープを用いた精密治療やインプラントなど、口腔内全体の健康を長期的にサポートする包括的な歯科診療を提供している。
歯を残す治療は「どこまで失ったか」で変わる
歯を残す治療と一口に言っても、その中身は患者さんの歯の状態によって大きく異なります。虫歯がまだ神経の手前で止まっている歯と、歯ぐきの下まで崩れてしまった歯とでは、当然とるべき方法が違ってくるのです。まず大切なのは、自分の歯が今どの段階にあるのかを正しくつかむことでしょう。
そして見落とされがちな事実があります。早く動くほど残せるものが多くなる、という点です。虫歯が浅いうちなら神経を丸ごと守れますし、進んでいても根がしっかりしていれば被せ物の土台として活かせます。逆に、痛みを我慢して放置するほど、選べる手立ては1つ、また1つと減っていくのです。歯を残せるかどうかは、技術だけでなく「いつ治療を始めるか」にも大きく左右されます。
なぜ「神経」まで残したいのか
歯を残す話のなかで、まず鍵になるのが歯の神経(歯髄)です。歯髄は、歯に栄養や水分を送り、さらに痛みや刺激を感じ取るセンサーの役割も担っています。神経を取ること自体が悪いわけではありませんが、神経を失った歯は栄養が届かなくなり、乾いた枯れ木のように少しずつもろくなっていきます。
もろくなった歯は、噛む力で割れてしまうリスクが高まります。歯の根が縦に割れる破折は、残念ながら抜歯につながりやすいトラブルの代表でしょう。神経を残せるかどうかは、その歯がこの先どれだけ長くもつかに直結するのです。だからこそ、可能な場面ではできる限り神経を守る治療が最初に検討されます。
残した歯には人工の歯にない「歯根膜」がある
歯を残す価値は、神経だけにとどまりません。天然の歯の根は、歯根膜(しこんまく)という薄い組織を介してあごの骨とつながっています。歯根膜は、噛んだときの硬さや力加減を感じ取り、その情報を脳へ伝えるクッション兼センサーの役割を果たしているのです。
この歯根膜は、抜歯してインプラントや入れ歯に置き換えると、もう取り戻せません。人工の歯はしっかり噛める一方で、天然歯のような繊細な噛み心地までは再現しきれないといわれています。自分の歯を1本残せるということは、こうした感覚の働きごと残せるという意味でもあります。だからこそ、残せる見込みが少しでもあるなら、まずその道を探る価値は大きいといえるでしょう。
神経を残す治療(歯髄温存療法)という最初の選択肢
虫歯が神経のすぐ近くまで、あるいはわずかに達してしまった場合でも、すぐに神経を抜くとは限りません。歯髄温存療法(歯髄保存療法)は、傷んだ部分だけを丁寧に取り除き、神経を守る薬剤でふたをして、歯髄を生かしたまま残す治療です。傷みの深さに応じて、覆髄や断髄と呼ばれる処置が選ばれます。近年はMTAセメントという、神経を保護しながら歯の回復を助ける材料が使われることも増えてきました。
ただし、すべての歯に使えるわけではありません。細菌の感染が神経の奥深くまで広がってしまった歯では、温存してもかえって痛みや炎症が長引くため、適応の見極めが欠かせないのです。ここで治療の成否を分けるのが、唾液の侵入を防ぐラバーダムという薄いゴムのシートと、患部を拡大して見るマイクロスコープでしょう。細菌をできるだけ持ち込まない清潔な環境で処置できるかどうかが、神経を残せる確率を大きく左右します。痛みが軽いうちに受診するほど、この選択肢を選べる可能性は高まると考えてよいでしょう。
神経を取っても歯を残す「精密根管治療」
すでに神経が死んでいたり、感染が広がって温存が難しかったりする歯では、根管治療によって歯を残していきます。根管治療とは、歯の内部にある神経の通り道(根管)から感染した組織を取り除き、洗浄して薬剤を詰め、再び細菌が入らないよう密封する治療です。土台となる根を清潔に保つことで、その上に被せ物を作り、歯を使い続けられます。
肉眼では見えにくい細く複雑な根管を、マイクロスコープや歯科用CTで確認しながら処置すると、感染源の取り残しが減り、再発のリスクを下げられます。一度治療した歯がぶり返した場合でも、より精密にやり直すことで残せるケースは少なくありません。なお、根管治療を終えた歯は、必ず被せ物まで入れて噛む力から守ることが肝心です。土台のまま長く放置すると、せっかく残した歯が割れてしまうこともあるためでしょう。
通常の治療で治まらないときの外科的な手立て
何度根管治療を繰り返しても根の先の炎症が引かないときには、外科的に対応する方法があります。歯根端切除術は、歯ぐきを少し開いて、根の先の病巣と根の先端だけを取り除く処置です。前歯のように根の先へ届きやすい歯で選ばれることが多いといえます。
奥歯などで歯根端切除術が難しい場所では、意図的再植術が検討される場合もあります。歯を一度ていねいに抜いて、口の外で根の先を処置してから元の位置へ戻す方法でしょう。歯の根を覆う歯根膜という組織は乾燥に弱いため、短時間で正確に戻す高い技術が求められます。成功率には限界もあるので、適応かどうかは慎重に判断されるのです。
歯ぐきの下まで失った歯を残す方法
虫歯や破折で歯ぐきの上の部分がほとんど失われ、根だけが残ったような歯でも、あきらめるのは早いかもしれません。被せ物をしっかり支えるには、歯ぐきの上に健康な歯質が帯のように一周残っていることが望まれます。この帯を確保するための方法が、大きく2つあります。
1つは矯正的挺出(エクストルージョン)で、歯ぐきの中に埋もれた根に矯正の力をかけ、ゆっくりと引き上げて健全な部分を露出させる方法です。歯を抱え込むように被せ物を作れるため、外れにくく長持ちしやすくなる利点があります。もう1つは歯冠延長術(クラウンレングスニング)で、歯ぐきや骨の位置を外科的に少し整えて、被せ物に必要な歯の高さを確保する処置です。どちらも、根だけになったからと抜いてしまう前に、検討する価値があります。
支える骨が失われた歯を残す「歯周組織再生療法」
重度の歯周病で歯を支える骨が溶け、歯がぐらついてきた場合には、歯周組織再生療法が選択肢になることがあります。エムドゲインやリグロスといった薬剤、あるいは特殊な膜を用いて、失われた骨や歯ぐきの組織の再生をうながし、歯の安定を取り戻す治療です。
すべての歯周病に使えるわけではなく、骨がどの方向にどう失われたかという欠損の形や、全身の状態によって適応が分かれます。とりわけ縦方向に深く骨が失われたケースでは、高い効果が期待できる場面もあるといわれています。歯周病が理由で抜歯と言われた方は、再生療法の対象になるかどうかを一度確かめてみるとよいでしょう。
歯を残せる確率を上げるために大切なこと
段階ごとの治療を見てきましたが、どの方法を選ぶにしても、残せる確率を高めるために患者さん自身ができることがあります。最も大きいのは、やはり早めに受診することでしょう。痛みや違和感が小さいうちほど、神経を含めて多くを残せる可能性が広がります。
もう1つ知っておきたいのが、設備によって結果が変わりうるという点です。ラバーダムやマイクロスコープ、歯科用CTがそろっているかどうかは、感染源を断ち切る精度に直結します。そして、他院で抜歯と言われて納得できないときは、別の歯科医師にセカンドオピニオンを求めるのも有効でしょう。設備や得意分野が違えば、残せるという判断に変わることも珍しくありません。なお、抜歯の判断そのものの考え方については、当院の別の記事「抜歯の判断基準はどう決まる?残せる歯と抜く歯を分ける歯科医の視点」でも詳しく解説しております。
歯を残せるか迷ったら鈴木歯科クリニックへ
歯を残せるかどうかは、見えている1本だけでなく、お口全体の状態とこれからを見据えて見極める必要があります。他院で抜歯と言われて迷っている方も、別の歯科医師の意見を聞くことで、納得して方針を選べるようになるでしょう。
鈴木歯科クリニックは、山形市南栄町で開業から30年にわたり、地域の患者さまのお口の健康に向き合ってまいりました。歯科用CTを用いた診断にも対応し、残せる可能性を多角的に確かめたうえで方針をご提案します。院長は歯を失った後の補綴(入れ歯やブリッジなど)を専門的に学んできた経験をもち、万が一抜歯が避けられない場合にも、その後の噛む機能をどう取り戻すかまで含めてご相談いただけます。
「抜歯と言われたが本当に残せないのか知りたい」「神経を抜かずに済む方法はないか」という方は、まずはお気軽にご相談ください。抜いた後の備えについては、当院の別の記事「抜歯を回避する方法は?残せる歯の見極めと抜いた後の備えまで」もあわせて参考にしていただけたら幸いです。駐車場も20台分ご用意しております。ご相談・ご予約は、お電話にて承っております。
鈴木歯科クリニックが大切にしているのは、できる限り患者さまご自身の天然歯を残すという方針です。抜歯すべきか迷っている段階でも、早めにご相談いただくほど、残せる可能性や選べる治療の幅は広がっていきます。気になる段階で、一度お口の状態を一緒に確認してみませんか。
山形で歯医者・歯科医院をお探しの方は鈴木歯科クリニックにご相談ください。
虫歯治療・歯周病治療・矯正歯科・小児矯正歯科・審美歯科・予防歯科・インプラント・入れ歯などの治療に対応しております。 マイクロスコープ、歯科用CTレントゲンを完備しておりますので、より精密な治療が可能です。
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